はじめに
インプラントを行うにあたり、インプラントを植立するための 骨幅や骨の高さがない場合、そのままの状態でインプラントを行うと 成功率は非常に低くなります。
適切な状態で植立してこそ インプラントの長期安定が望めるのです。
GBR 法とは、インプラントを行うにあたり、骨の幅や高さがない時に、骨を再生させる方法です。
GBR法の術式としては 2つの方法があります。
一つは インプラントを植立する前に骨の増大をはかる方法です。
これは、インプラントの前準備としてのGBR 法です。
まず、歯肉の中に 骨の再生を促す 特殊な膜を入れます。(図1参考)
状態によって異なりますが、3〜4ヶ月間骨が成熟するのを待ちます。
その後、膜を除去するとインプラントに適した骨が膜の下に再生しています。
そこで初めてインプラントの植立を行います。
この方法は、治療期間が長くなりますが、もともと大きく骨の幅がない人などは このGBR 法を行ってからインプラントを行う必要性があります。
無理な状態でインプラントを行ったとしても 長期的な安定は期待できません。
今後のことを考えれば確実な選択といえます。
次にインプラントと同時にGBR 法を行う方法です。
これは、インプラントを行うには骨が少ないが(骨幅に問題があるが)、術前GBR 法をしなくても大丈夫な場合に適応します。
インプラントを植立すると同時にGBR 膜を併用します。
約3ヶ月後に膜を除去し、後は上部構造を作製するだけです。(図2参考)
当医院では、こうしたGBR 法に対し2種類の膜を使用します。
一つは 吸収する膜:Tiuuse GuideTM メンブレンで、
もう一つは 吸収しない膜: GORE-TEXメンブレンです。
Tiuuse GuideTM メンブレンは コラーゲンからできており、吸収するため後から取り出す必要性がないので治療の回数が少なくなります。
しかし、この膜には適応症が限られており、大幅に骨を再生させることはできません。
GORE-TEXメンブレンは、吸収しないため 後から取り出す必要性があります。 GORE-TEXメンブレンは1969年に開発されたもので、歯科領域以外でも、人工血管や人工硬膜、縫合糸等で400万症例に使用されており、医療分野において非常に高い評価を得ている材料です。
どちらの膜を使用するかは適応症があり、その状態によって異なります。

GBR法の症例を見てみよう!
下の写真は、初診のレントゲン写真です。
下顎臼歯部にインプラントを希望されて来院されましたが、骨の凹吸収が大きく認められ、このままではインプラントは行えません。
そこで GBR法を行い、骨の増大後インプラントを行う計画を立てました。
下のレントゲン写真は、GBR法 後5ヶ月のインプラント診査時の状態です。骨の凹吸収部に再生が認められます。
骨吸収の穴が埋まってきているのがわかるかと思います。
インプラントを行うのに十分な骨の高さができました。
下の写真は、インプラント埋入後(GBR法 後)10ヶ月の状態です。
インプラント周囲に十分な骨が存在しており、安定した状態です。
このように骨がない(少ない)部分には骨を再生させて行うことが必用です。
ステージドアプローチ と サイマルテイニアスアプローチとは?
GBR法には、
ステージドアプローチ と
サイマルテイニアスアプローチ
という方法があります。
この項のはじめに 『GBR法』には、
『あらかじめ(インプラント埋入前に)骨を増大させるGBR法』と
『インプラント埋入と同時に行うGBR法』
があることを解説しました。
あらかじめ(インプラント埋入前に)に骨を増大させる方法を
『GBR法』の中でも『ステージドアプローチ』と言います。
それに対し、インプラント埋入と同時に行う『GBR法』を
『サイマルテイニアスアプローチ』と言います。
先程の症例は、先に骨の増大を行い、その後にインプラントを埋入してありますので、『ステージドアプローチ』になります。
どのように使い分けるのか?
使い分けですが、骨の幅が若干少ない程度であれば
『サイマルテイニアスアプローチ』の方が 患者さんにとっても1回の手術で済みますので 楽な治療方法です。
しかし、大幅に骨がない場合には時間はかかりますが、
『ステージドアプローチ』で骨を増大させた方が無難です。
しかし、一般的に『ステージドアプローチ』は、骨を再生(増大)させるまで約3〜4ヶ月かかります。
骨の再生(増大)を確認できた後 インプラントを埋入することになります。
患者さんにとっては 時間がかかり大変ですが、骨の幅や高さがない場合には有効な治療法です。
術者によりどちらを選択するかは違う! なぜ?
先程書きましたように『サイマルテイニアスアプローチ』は、インプラントと同時にできますので、治療回数が少なく患者さんにとっても楽な治療法です。
それでは全て『サイマルテイニアスアプローチ』で行った方が良いということになります。
『ステージドアプローチ』や『サイマルテイニアスアプローチ』は、症例にもよりますが、難易度が高い治療です。
誰にでも行える治療ではありません。
高い知識、技術、経験がない歯科医師が行うとトラブルが起ることもあります。
特に診断をあやまり、技術的にも未熟であるとインプラントと同時に行う
『サイマルテイニアスアプローチ』では 悲惨な結果となることがあります。
つまり インプラント自体が失敗するということです。
だからと言って『ステージドアプローチ』が簡単ということではありませんが、無理矢理1回で治療を終えようとすると失敗したら大変なことになるので、骨を十分作ってからインプラントを行う『ステージドアプローチ』のがインプラント経験の少ない歯科医師には 無難な方法とも言えます。
ですからどちらの治療法を行うかは、骨がある 少ないという差以外にも術者の知識、技術、経験により違うのです。
どこまでが骨が少なく、どの状態が骨があるのか?
骨が少ない、多いというのは どう判断するかということですが、
完全に明確な基準がありません。
多くの研究者により その適応症や一定の基準は発表されていますが、
臨床というのは まったく同じ症例は存在しないということと、先程書きました技術者の差があるため『どこまでが骨が少なく、どの状態が骨があるのか?』という基準を設定するのは困難です。
(もちろんある一定の基準というものはあります)
インプラント治療を希望して歯科医院に何件か行かれた患者様は 経験されたかもしれませんが、ある歯科医院では『骨がないからできない』と言われ、ある歯科医院に行ったら『大丈夫』と言われたということがあります。
インプラントを行うための骨が『ある』、『ない』といった基準は、その歯科医師の知識、技術、経験によりだいぶ違うのです。
私の診断基準です
私自身の診断基準は、まず安全性を最優先にしていきたいと思います。
そして 次に患者様の負担です。
治療だけのことを考えると どうしても治療が複雑になったり、期間がかかります。
治療回数(手術回数)が少ないということは非常に大きなメリットになります。
そのため できるかぎりインプラントの手術が少なくなる治療法を選択していきたいと思っています。
そのため、インプラントの埋入方法も可能な限り1回法で行いたいと思っています。
*1回法と2回法についてはこちらをクリックして下さい。
しかし、インプラント治療で一番難しい前歯部において『GBR法』を併用する場合には『ステージドアプローチ』や『2回法』を選択する可能性が高くなります。
最後に!
GBR法を行えば、骨は再生し、10%元通りに戻るわけではありません。
骨の再生には、限界があるのです。
この詳細は、是非 以下をご覧になって下さい。
・GBR法(骨再生治療)の限界
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